秋が近づき風が冷たくなった事もありますが、たまには怖い話でも…。
私自身幽霊なんか信じていない。
カメラを握っているためか、どうしても目の前にあるものしか信じなくなる。
しかし、妙な経験はした事がある。
それはスタジオに居た頃の話。
どうもスタジオにはこういった話が多かったりもする。
出るとか見たとか。
である。
泊まり込みで撮影の勉強をしていた時の話だが、夜になるとカポック(発泡スチロールのでかいやつみたいなもの)をしいて一眠りしようとしていた時の出来事。
夏なのにやけに空気が乾燥しているのか、木が鳴っているなと撮影している時にはそう思っていた。有線の音楽がヘヴィメタルな曲だったため気にならなかったのもあるかもしれない(数年前の話なのにヘヴィメタかよ)
しかし、有線を消してカポックをしいていざ寝ようとしていた時である。
しんと静まり返った闇に、音が聞こえる。
「カンカンカン」
金属製の階段を小さな子供か、か細い女の足音にも聞こえる。
すると、でっかい板をギシギシ…と人の手で揺するような音がずっと聞こえる。そうだなぁ、時間にすると30分鳴って5分休んでまた30分続く。
これがずっと朝まで続く事になるんだよね。
すると、バタバタバタ…と上の階に走る音が響く。
思った。時刻は草木も眠る丑三つ時。
上には事務所があるけれども、誰もいないはず。
しかし、確実にそれは主張するように音を立てている。
うっせぇなぁっ!(江戸っ子風に)
事務所までおそるおそる行ってみることにした。
人が居ても腰を抜かさないように。一歩一歩歩いていく。
事務所の扉の前に着いた。
辺りはシンとしている。
灯りは無く、静まり返っている。
人の気配は無い。
気味の悪さを覚えたが、寝る事にした。
戻ってカポックの上に寝そべる。
最初は静かなのだが、すぐに音がするようになる。
今度はいきなり上から聞こえる。
バタバタバタ…。バタバタバタ…。
寝れん…。
音がする方向を目で探す。
右から上へ。上から下へ。下から左へ…。
この音と一緒にギシギシも聞こえる。時たま金属音も…。
あかん…気ぃ狂うわ。
「こっころにうずもれたぁあっ!優しさの星たちぃがぁあっ!」
心の中で森口博子の「水の惑星」を口ずさむ。
続いてエルガイムのOP。更にはボトムズ、イデオンと続く。
アニソンは何故か熱い歌が多い!しかも、産まれてないだろ、そこの若いやつ(私)!とツッコミがあると面白いだす。
そう、寝ようとしてかれこれ3時間は経過していた。
携帯の時計は4時になっていた。
そこで気が付いた。
これ…ラップ音?遅
そう、私は鈍ガバチョだったのだ。
かといって家にも帰れず、寝床を変えるやる気も失せていたため…寝ずに過ごす事に決めた。
たまに…壁を叩くようなでっかい音が聞こえてもシカト。
三つくらい聞こえる足音もシカト。
板をギシギシさせる音もシカト。
どうにか2時間耐えた。耐えてやったぜヴァァカァァァッ!(お前の方がヴァカだろってツッコミは嬉しくなります)
時刻は朝の6時。
一睡もしてません。三時間後皆が出てきた。しばらく暇が出来た時に音の話をした。
だって…マジで怖かったもの。
皆は「あぁ、出るよ」とタンパクな返事。そんなもんだわな。
この一年後、地理的に江戸の頃には遊廓のあった場所だと知った。
上を走る正体は何と無くだけどわかる。
事務所に務めていた人が一年前くらいに亡くなっていたし、数ヶ月前にスタジオマンも亡くなっていたんだと…。
おそらく二人の想いなんだろうと思う。
死者を悪く言うつもりはないから、こう言う。
悔しかったんだろうね、きっと。
もっとやりたい、ここに居るんだ、仕事よこせよ!
って言ってるんだと思うようにした。どうする事も出来ないけど、せめてそう思えば恐くはない。
問題は金属音の方が怖かった。
戦時中、子供が古井戸に落ちて亡くなっていたらしい…。
怖ぇよ…。